カンナビス(大麻)市場の背景 ー新型コロナによる財政難が背中を押すー
アメリカの大麻市場は、2000 年初頭から大麻の医療仕様について様々な研究が進み、痛み、てんかん、癌、AIDS、喘息、緑内障、食欲増進、うつ病、睡眠障害など、様々な領域における医療利用に関して大麻の合法化が適用されたことで一気に投資家が注目するマーケットとなりました。
この時が第1 期のカンナビス(大麻)ゴールドラッシュと呼ばれています。
2017 年には、17 の州で大麻の医療使用が州法で認められ、大手製薬会社などと提携するカンナビス関連企業がこぞって上場して行きました。
嗜好品としての大麻の合法化は、2012 年頃から進み、医療大麻の製造許可のある企業を筆頭に以下の州で21歳以上の消費者を対象に大麻の一般販売が進みました。コロナ禍が影響し在宅の時間が増えることで大麻の市場は過去最大の売上げを叩き出しました。
米誌『フォーブス』は2021 年5 月3 日号で、「医療用と嗜好用の大麻解禁が進むなか、米国人はかつてないほど多くの大麻を消費している。2020 年の米国全体の合法大麻の売上高は前年から46%増加し、175 億ドルに達した」と報じた。
これを日本円に換算すると約1 兆9250 億円となり、日本たばこ産業の2018 年度の売上高、2 兆2400 億円にほぼ匹敵する。
2020 年、WHO では、大麻の有害性が見直され医療的価値が認められたことから、最も危険な薬物を意味するカテゴリスケジュールIV(国際条約における薬物の規制)から大麻を除外しました。現在50 カ国で大麻の非犯罪化が確定しています。(非犯罪化とは少量の所持や摂取では罰則や罰金がない状態)アメリカでは、すでに合法化されていない都市でも少量の所持で逮捕や罰則を得ることはなくなっており、大麻関連の前科などについては全て記録を抹消する法案も可決しています。2020 年11 月現在、嗜好品としての大麻使用は、すでに15 の州と首都ワシントン他3 つの地域で合法化され、36 の州及び4 地域で医療大麻が合法となっています。(厚労省、第2回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」 資料より)
このマーケットは、隣国のカナダで大麻の合法化が進んだことによりカナダ市場で多くの企業が上場しその資金をカルフォルニアやコロラドなどの主力都市へ導入したことにより市場サイズは飛躍的に大きくなりました。
今後、合衆国法で合法化の法案が通れば、州をまたいでの大麻関連商品の販売が可能となり、銀行など金融機関が大麻企業に対してのファイナンスをつけることができることから資金調達が可能となり上場できるケースも一層増える傾向となっています。
また、アメリカの大麻ブランドがヨーロッパなどにも輸出され進出することができるようになっていくと予想されます。
ただし、今後アメリカのカンナビス企業に対しての国外からの投資には規制が入る予定となっていることから、現在が3回目のカンナビスゴールドラッシュへ参入する最後のチャンスと言えるかもしれません。
GPIF* が投資している
NASDAQ に上場している現在世界第9 位の大麻関連企業であるキャノピー・グロースへは日本の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が投資している事実もアメリカ経済誌で公表されています。
GPIF はキャノピー・グロースを始めとする大麻関連企業に約8,000 万ドル(87 億円)投資しており、医療目的の大麻関連製品が日本国内でも使用される方向で調整されていることも影響していると思います。
これは海外大麻産業が社会倫理に反していないと判断したというとても大きな根拠となっています。
開示資料によると、GPIF は少なくとも3つの大麻関連銘柄を保有していました。
嗜好用大麻を扱うカナダのキャノピー・グロースについては約170 万株を保有し、これに基づくとGPIF は同社の上位株主12 位以内に入る。
トロントに本拠を置き、「スピナッチ」や「ハッピー・ダンス」などの大麻ブランドを展開するクロノス・グループ保有株の価値は約1,700万ドル。医療用大麻会社オーロラ・カンナビス保有株の価値は700 万ドル、上位株主10 位以内だった。
出典元 URL:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-03-18/QQ6LK8DWX2PT01
※GPIF は、年金積立金の管理及び運用を行うとともに、その収益を国庫に納付することにより、厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定に資することを目的としている。